不眠症
「寝つきが悪い」「夜中や早朝に目が覚める」――こうした睡眠がうまくいかないことで日常生活・社会生活に支障をきたし、それが慢性的に続くようなら、それは不眠症という病気かも知れません。
睡眠には個人差があるため、7時間以上眠っているにもかかわらず「眠れない」と感じる方がいる一方で、3~4時間の睡眠でも問題の無い方もいます。
そのため、客観的に何時間眠っていようと、ご本人が安眠・快眠できていないと自覚が続く場合は不眠症も否定できません。
現在、日本では成人の約5人に1人は睡眠に関してなんらかの問題を抱えていると言われています。不眠症の原因としては、「環境要因」「生理的要因」「心理的要因」「生活習慣的要因」など、さまざまな原因があります。 最近になって不眠を訴える方が多くなっている背景には、人口の高齢化、ライフスタイルの多様化、24時間社会における生活リズムの乱れ、ストレスなどがあるようです。
不眠症はけっして珍しい病気ではなく、誰もがなる可能性があります。また、うつ病など他の精神疾患の症状の一つとして不眠症が現れてくる場合もあります。 「眠れない」ことでお困りの場合、他の病気のサインかもしれません。 早めに根本的な原因を探ることも重要です。
不眠症の種類
不眠症は、眠れないタイプによって、入眠障害・中途覚醒・熟眠障害・早朝覚醒の4つに分けられます。入眠障害
寝つきが悪く、なかなか眠れないタイプ(30分~1時間以上)で、心配事やストレスなどによって起こりやすくなります。入眠障害は、不眠症の中では一番よく見られるタイプです。
中途覚醒
寝つきは良いものの、寝ている途中にトイレなどで起きてしまうと、その後なかなか眠れないタイプです。
熟眠障害
寝つきもよく、途中でも目を覚まさない、睡眠時間も十分でも、眠りが浅く、目覚めたときに「ぐっすり寝た感じがしない」熟睡感のないタイプです。高齢者や神経質な人に多く見られます。
早朝覚醒
寝つきは良く、すぐ眠れるものの朝早く目が覚めてしまい、そのまま眠れなくなってしまうタイプです。うつ病の患者さんや高齢者に多く見られます。
不眠症の原因
現代は、あらゆる環境(家庭や学校、職場など)にストレスが溢れており、そうしたストレスが要因となって不眠を訴える方がいらっしゃいます。主な要因は以下の通りです。
- 環境的要因:季節の変わり目、引っ越し、部署が変わったり仕事の内容が変わったなど
- 身体的要因:更年期などによるホルモンバランスの変化、前立腺肥大等による頻尿、皮膚病(アトピー性皮膚炎など)による痒み、気管支ぜんそくなど
- 心理的要因:不安、イライラ、人間関係の悩みなど
- 生活習慣的要因:アルコールや喫煙、コーヒーの飲み過ぎなどによるカフェイン摂取過多、入眠前のインターネットや携帯・スマートフォンのやり過ぎなど
不眠症の治療
不眠症は、その原因により治療法も変わってきますが、生活習慣の改善と薬物療法が中心になります。いずれにしても、不眠の原因である心の病気、身体的疾患、不適切な睡眠環境などの改善に取り組むことが大切です。
非薬物療法
生活習慣の改善による不眠治療です。室温、部屋の明るさなどを調節することにより睡眠が得やすい環境にする、軽いストレッチ、音楽や読書などリラックス出来る時間をつくる、睡眠時間の4時間くらい前に食事を済ませ、入浴は1~2時間前にする、毎朝、朝日を浴びて体内時計をリセットする、などです。
薬物療法
不眠のタイプによって、睡眠導入剤のタイプもそれぞれ変わってきます。寝つきが悪い、途中で起きてしまう、早くに目が覚めてしまう、などの症状に応じて、相応しい睡眠薬が処方されます。また、抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬なども使用されることがあります。
医師に指示された用法・用量を守って、正しく使用しましょう。睡眠薬は絶対にお酒と一緒に飲んではいけません。 睡眠薬を服用したら、30分以内には寝床につくようにしましょう。 なお服用していた睡眠薬をいっぺんに中止すると、リバウンドで不眠が悪化することがあります(反跳性不眠)ので、医師の指示に従いながら、ゆっくりと減量していきしましょう。